マルチ商法にはクーリングオフとは別に「中途解約制度」があります。クーリングオフ期間は商品到着後20日間だけですから、特にこれら判断にある程度時間が掛かるような契約において、「中途解約制度」はよく利用されるものと思いますが、同制度を定めた「特定商取引法」の条文は複雑で、個別の判断を要する部分も多く網羅的な説明がありません。以下考察します。尚、以下の内容をご確認のうえ不明点などあればお気軽にご相談ください。無料相談ご希望の方は以下の番号までお電話頂くかトップページ「無料相談はこちら」の中にあるメールフォームからお問い合わせをお願い致します。電話窓口: 03-5794-5106 (日祝除く午前10時から午後7時)
中途解約可能な条件
誤解無きよう念の為に記しますと、法律上解約出来ない契約は存在しませんので、マルチ契約は何時でも解約出来ます。そこで問題となるのが仕入れた商品の処理や多額の違約金ですが、以下の条件を満たしている場合、特定商取引法規定の中途解約制度を利用出来ることになります。
- 契約から1年以内であること
- 商品を受け取ってから90日以内であること
- 再販売していないこと(他の人を勧誘、契約させていないこと)
- 自ら商品を使用、消費していないこと(※1)
※1, 契約勧誘時に販売員が説明の為に使用した分や「試しに使ってみて」と開けさせた分は「消費者が自ら使用、消費した」ことにはなりません。また、自ら商品の全部を使用、消費していても中途解約は可能ですが、商品分の返金が無いと制度としての利点が薄くなるので一つの条件としています。詳しくは後述します。
中途解約制度の基本的な考え
まず、マルチ契約において申込者は「入会金」や「講習費」、そして「商品代金」など様々な名目の代金を負担していますが、中途解約制度ではこれら支払った金額が返金されることを前提に、業者が請求出来る違約金に上限を預けています。事前に契約書などで違約金の取り決めがあってもこれら上限を超えるものは無効となり、やはり「上限」ですからそれら違約金を必ずしも徴収しなければいけない、ということでもありません。ではそれぞれの名目別で設定される違約金について以下整理してみます。
契約自体の解除について
契約自体の解除に際し、業者が請求出来る違約金の上限は「契約締結及び履行のために通常要する費用」とだけ記されています。これだけではよく判りませんので、平成25年2月20日付けの通達「特定商取引に関する法律等の施行について」に依ると、これら費用の内訳は「書面作成費、印紙税、代金取り立ての費用、催告費用等」となっており、やはり明確な金額設定は無いものの、通念上高額になるような名目ではありません。
尚、対象が違いますので同様に考えることは出来ませんが、同じく特定商取引法が定める「継続的役務提供契約」(エステや学習塾など)において「契約締結及び履行のために通常要する費用」の目安とされている役務提供前の契約解除違約金は11,000円から30,000円程度に分布しており、契約手続きに掛かる事務経費に然程の違いがあるとも思えませんので、目安の目安といよいよ曖昧ですが、参考として記します。
商品の返品について
未使用商品は返品可能で、商品代金は返金されます。その際に業者が請求出来る違約金の上限は「商品販売価格の1割(10%)相当額」となり、仮に50万円分の商品を返品した場合の違約金は最大でも5万円となります。前述のとおり、契約勧誘時に販売員が説明の為に使用した分や「試しに使ってみて」と開けさせた分は「消費者が自ら使用、消費した」ことにはならず、また、商品返品の可否は「通常販売されている商品の最小単位を基準」としますので、個別に包装、販売されている商品が複数個入った包装を開梱したとして、その全部が返品不可となる訳ではなく、個別単位として使用、消費、或いは開封などをして価値を毀損させた分が返品不可=個別販売価格の100%相当額が違約金の上限になります。(同じく平成25年2月20日付け「特定商取引に関する法律等の施行について」参照)
役務について
講習など役務については「既に受けた分の役務代金と同額」が違約金の上限となります。よって仮に10回の講習代金を前払いしており3回の講習を消化した場合、残り7回分は返金、3回分が違約金の上限となります。
特定利益について
特定利益とは再販売により得るマージンやボーナスの総称ですが、これらは全額と同額が違約金の上限になります。しかし、中途解約条件には上記「再販売していないこと」があり、よってこれは自身が自ら商品を購入したような場合のことを言います。マルチ商法では継続的な売上を維持することで「ボーナス」や「ステージ」など特典に繋がるシステムとなっており、他人への再販売はせず専ら自身で商品購入を続けている状況がよく見られ、その場合に得た(という言い方も変ですが)特定利益は全額違約金として徴収される可能性がある、という意味になります。
まとめ
総じて、中途解約をした際に掛かる違約金については「契約締結及び履行のために通常要する費用」+「返品不可商品の全額」+「返品商品の1割相当額」+「受講した分の役務相当額」+「特定利益」以内に収まり、残りが返金されることになります。やはり判りにくいですね。ただ、大半を占める商品代金の清算にこれら制度の意味があることは前述のとおり、他の部分が大きな問題となることはあまり聞いたことはなく、いずれにせよこれら法律で法外な違約金請求が抑制されることは間違いありません。それにしても難解ですが、加盟直後の販売員など皆これを理解・説明しているのでしょうか。その他の法令含め付け焼刃でどうにかなるとも思えませんが。